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2007-12-18

検閲国家への第一歩か?

ITMediaの記事で『反対意見多数でも「ダウンロード違法化」のなぜ (1/2)』という記事が掲載された。俺も本当に「なぜ?!」と聞きたい。大多数の国民が反対していることを一部の利権者のために法制化するのはいかがなものか。民主主義国家である日本でこのようなことがまかり通っていいのか。


しかしそもそもどうやって取り締まるというのだろうか。もし法律が制定されても、そこには乗り越えがたい技術的な壁がいくつも存在する。何をもって「ダウンロードした」という証拠とするのだろうか。違法サイトの運営者に対して「ダウンロードした人のリストをください。」と言っても持ってるワケがない。ホームページのアクセスログを記録しなければいけないという法律もなければ、運用面から言ってもアクセス履歴などは膨大なデータ量になるため全てを保存することはコスト面から言っても現実的ですらない。

それでは通信経路を傍受するとでも言うのだろうか。確かに警察ならそのようにプライバシーに係わることでも捜査という大義名分があればやれないことはない。しかしそれも通信経路をSSLなどの暗号化手法で守ってしまえば手も足も出なくなる。もしSSLの通信をリアルタイムで(ダウンロードのように通信量の多いトラフィックを対象にできるぐらいに)解読できれば、それはもの凄い発明であると同時に現在のインターネット上での通信技術が根底から崩壊してしまう大事件であると言える。それとも何だろう。違法であるとラベル付けされたサイトへアクセスしただけでアウト!と言われてしまうのだろうか。それは切ないなあ。プロキシを使うしかないなあ、となる。

どうもあまり通信技術に明るくない人たちが「とにかくダウンロードを違法化したい!」という思いから(国民の声を無視してまでも)突き進んだだけのようにしか思えない。上で述べたようにすぐに思いつくような簡単な回避策があるため、取り締まりの効果があるかどうかは疑わしい。どうしてそう思うかというと、以下のような内容が記事に書いてあるからだ。

記事から引用:川瀬室長は「反対意見はもっともだと思うし、その意見は十分に踏まえているつもりだ」と釈明する。「反対する人々の疑念に答えるため、政府、文化庁、権利者にも汗をかいてもらって、まぎれないように運用していきたい」(川瀬室長)

反対意見は法制化に対して反対しているのであって、運用で回避するなどというのは理論のすり替えである。本当に強引だ。彼は絶対に「もっともだ」などとは思っていないだろう。もしくは「踏まえている」つもりになっているだけではないか。そもそも汗をかくことの意味が分からない。汗をかけば国民の理解が得られるとでもいうのだろうか。俺には彼の主張を支えるロジックすら理解出来ない。

記事から引用:例えばユーザー保護の施策として、法改正がなされた場合、その内容を政府・権利者がユーザーに周知徹底するほか、権利者がユーザー向けの相談窓口を設置したり、違法ダウンロードに対する警告方法を周知。適法サイトを示すマークを普及させる――といったアイデアを提案。

一体この世界にいくつのWebサイトがあるというのだろう。明らかに日本国内しか意識していない意見ではないか。インターネットに国境はないというのに。日本のWebサイトのコンテンツをダウンロードしているのは日本人だけではないのに。このような制度を作ったら日本がインターネットの孤島になってしまうだろう。すでに言語の問題で孤立しているという話もあるが。もし法律が制定されてしまったら、一部の業界の利権者のためにインターネット全般の利用におかしな制限を設けてしまうことになり、ひいては国民全体の利益を損ねることになるだろう。このようなアイデアしか出せないで居て、ロクな取り締まりが出来ようものか。

例えば究極的な取り締まりとして「あなたには違法ダウンロードの疑いがあるからあなたのディスクを見せなさい」と言ってディスクを調べるとしよう。しかし例えディスクから大量のMP3ファイルが見つかったとしても、それが違法にダウンロードしたものであるか被疑者が自分でCD-ROM等から取り込んで変換だものであるかの区別は出来ない。何故ならばデジタルだから誰がCD-ROMからコピーしても同じデータになる可能性があるのだ。そしてそのようにディスクを見る行為は検閲そのものである。国家権力がプライバシーに際限なく踏み込んでも良いワケがないが、例え検閲を行ったとしてもダウンロードの証拠を完全に掴むことは困難だろう。

そんなわけで、利権を守りたい気持ちは分かるが技術的には取り締まりが困難である上に国民には不利益をもたらす公算が高いので、法律を制定する前にもう少し冷静になって考えて頂きたい。

iTunesのようにうまくビジネスを拡大している例もあるし、津田委員が言うようにビジネスで勝負したらどうだろうか。Appleに美味しいところを持っていかれたからこんな風に利権を守ろうと躍起になってるような気もするが。

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