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2008-03-30

クリエイティブ・コモンズ考察。

クリエイティブ・コモンズというライセンスがある。日本ではまだそれほどメジャーではないが、非常に有用なライセンスなので紹介しようと思う。(個人的にもこれから使っていこうと考えている。)ライセンスは星の数ほどあるのになぜクリエイティブ・コモンズなのか?

まず、参考になる文献の紹介から。荒川 靖弘さんの『「クリエイティブ・コモンズ」について』
http://www.alles.or.jp/~spiegel/docs/cc-about.html

クリエイティブ・コモンズは著作権の範囲を限定するものである。クリエイティブという単語は日本人でもなじみが深いと思うので解説は省くとして、コモンズに焦点を当てる。コモンズとは「共通のもの」という意味である。つまりクリエイティブ・コモンズというライセンス(以下CCL)では、著作物の全てを著作者がコントロールするのではなく、成果を皆で「コモンズ=共通の領域」に置いて共有し、より創造性の高いものを創っていこうという試みがなされている。このような考え方は、英語で「SOME Rights Reserved」という言葉で表される。これまでの「ALL Rights Reserved」では著作物に対する全ての権利を著作権者が保持していたが、「SOME Rights Reserved」では著作物から発生する権利を、一部は保持するがそれ以外を放棄(コモンズに置く)するというものである。

ソフトウェアの世界ではGPLに代表される著作権を緩和するようなライセンスの考え方が先行しているが、ソフトウェア以外ではこれまでそのような取り組みがあまりなされてこなかった。しかしインターネットが普及し、デジタルデータで様々な情報が交換・共有・加工されるようになると「ALL Rights Reserved」が時代にそぐわないようになってきたのである。

CCLでは、著作権において以下の4つの属性を定義している。(クリエイティブ・コモンズのページより引用。荒川さんの記事とは表記が異なるが、後に名称変更があったので注意。)

  • 表示(Attribution, by):このアイコンが付いた作品を利用する人は、作品を創作した人(著作者)の氏名、作品のタイトルなど、作品に関する情報を表示しなくてはならないことを表します。
  • 非営利(Non Commercial, nc):このアイコンが付いた作品は、営利目的で利用してはならないことを表します。もちろん、別途許諾を取ることにより営利目的での利用が可能になりますので、営利目的で利用したい場合には、作品の権利者にコンタクトしてください。
  • 改変禁止(No Derivs, nd):このアイコンが付いた作品を利用する人は、作品を改変してはならないことを表します。
  • 継承(Share Alike, sa):このアイコンが付いた作品を改変して利用する場合、改変することで新たに生み出された作品は、当初の作品のライセンス条件を継承し、同一の組み合わせでライセンスされなければならないことを表します。例えば、あなたが「表示」と「非営利」のアイコンが付いた作品を改変して新しい作品をつくった場合、その作品は必ず「表示」と「非営利」のアイコンを付けた条件で公表しなくてはなりません。

そして、これらのオプションを組み合わせて使用するのだが、表示は必須であり、さらに改変禁止と継承は相反する内容であるため、その組み合わせは以下の6種類となる。
  1. 表示
  2. 表示 -- 改変禁止
  3. 表示 -- 非営利 -- 改変禁止
  4. 表示 -- 非営利
  5. 表示 -- 非営利 -- 継承
  6. 表示 -- 継承
この6種類を使い分けることでより柔軟に、様々なニーズにあうように著作権を限定することが出来るのである。GFDLも素晴らしいが、単一のライセンスで全てのニーズをカバーするのは不可能であり、バリエーションを設定した点はCCLが優れていると言える。では、各々の組み合わせが具体的にどのような場合において有用なのかを考察したい。

1.表示

ほとんどの権利を放棄するものであるので、何かを広めたい場合にに適用できる。例えば荒川 靖弘さんの文章は「表示」を採用しているが、それはクリエイティブ・コモンズを広めるという目的があるからだろうと推測している。この場合、著作物に価値を見いだすというよりも、他の目的があると解釈できる。また、フリーウェアなんかの場合に例えると、開発者がフリーでソースコードを提供する見返りに得るものはそのソフトウェアを創造したという「名誉」である。これにより名前が大いに売れたりすると、また著作物が創造的であれば仕事の依頼が来るなどのメリットがあるだろう。

2.表示 -- 改変禁止

主に写真や楽曲などのデジタルデータのように、独創性の高い著作物に適用できる。改変禁止の属性がなければコラージュ写真などを作成することも可能なので、そのような事態を避けるためにはこの属性が必要になる。表示だけでは困ることが起きる可能性があるPR活動をする際に有用ではないかと思う。例えば学校が校内の様子を写真で紹介する際など。

3.表示 -- 非営利 -- 改変禁止

非営利が加わると何が違うのか。非営利属性がない場合、例えば「自分が撮った写真を出版社が勝手に何の見返りもなく写真集として発行、利益を得る」というようなことが可能になる。PR活動が目的の著作物でない限り、または著作物を作成する活動そのものが非営利(Apache Foundationのように)でない限り、「非営利」属性を着けておくのが無難であろう。例え非営利の属性がついて居る場合でも、営利目的で利用したいという話を持ちかけられた場合は、著作権者が認めれば(見返りをもらって)第三者が著作物を発行することも可能なので留意されたい。

アフィリエイトがついたサイトに掲載するのが営利目的かどうかというのは判断が難しい。

4.表示 -- 非営利

ズバリ、Blogなどに適しているのではないだろうか。Blogでは他者の文章を引用するということが多々あるが、それは一種の加工であり「改変禁止」の属性がついていると都合が悪い。しかし個人のBlogが勝手に出版されるという事態があっても面白くない。おそらく多くのBloggerのような個人的な準クリエイター的な人たちにとってこのライセンスが最も適切なのではないだろうか。

5.表示 -- 非営利 -- 継承

「継承」という属性は、GPLを彷彿とさせるものがあるが、非営利が着いている分この組み合わせはGPLよりも厳しい。(GPLでは営利目的で改変&再配布することを禁止していないどころか、課金できるということを明記している。)「改変禁止」がないので、改変が活発なメディア、例えばWikiなどで有効なライセンスではないかと思う。そして「非営利」がついていることから、ターゲットはズバリ「個人が運営するWiki」ではなかろうか。

6.表示 -- 継承

多くの非営利のWikiがこれに該当するだろう。個人的な感触としては、GFDLに最も近いライセンスである。GFDLを適用できるような場合にはこの組み合わせが有効であると考えられるが、むしろGFDLを適用したほうが良いのではないだろうかと思う。(WikipediaはGFDL)

ライセンスの適合性に関しておわかり頂けただろうか?(雑な説明で申し訳ないが。)

というわけで、CCLに興味を持たれた方は是非使ってみて欲しい。

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